テトラコルドとヘクサコルドの乗り換えの関係

1 テトラコルドとヘクサコルドで気づいたこと
先日、テトラコルドの説明をしました。
2つのテトラコルドで音階が出来ている」(2019/11/12記事)

この記事に関連して、2つの発見をしました。
1つは、なぜムータツィオが「ファ」or「ソ」で行われていたか。
これに関連して、テトラコルドとヘクサコルドの関係や「シ」が無かった理由です。
もう一つは、ダイアトニックとテトラコルドの関係です。

登場する用語の簡単な説明
テトラコルド~4つの弦に由来し、4つの音階
ヘクサコルド~6音階
ムータツィオ~ソルミゼーションをする際に「fa」or「sol」から「ut」に乗り換えること
ソルミゼーション~楽譜を音名で歌うこと
旋法~現代の音階に相当する、長音階は「イオニア旋法」、短音階は「エオリア旋法」だった
柔らかいb・bb~♭フラットの仕組みや記号がない時代に、丸っこいbを書き「b・bb」音を低めに、現代の♭フラット
硬いb・bb~柔らかいb・bbに対し、角ばったbを書き「b・bb」音を普通にする、現代の♮ナチュラル


2 テトラコルドでの話は
教会音楽で使われていた6つの旋法を、テトラコルドの中が全てド始まりに移高すると。
<分離型>~タイプⅰ
①イオニア旋法~「レミファ」「ラシド」で「全全半」-全-「全全半」
②ドリア旋法~「レミ♭ファ」「ラシ♭ド」で「全半全」-全-「全半全」
③フリギア旋法~「レ♭ミ♭ファ」「ラ♭シ♭ド」は、「半全全」-全-「半全全」

<接合型>~タイプⅱ
④リディア旋法~シ♭「レミファ」「ファソラシ♭」は、全-「全全半」「全全半」
⑤ミクソリディア旋法~シ♭「レミ♭ファ」「ファソラ♭シ♭」は、全-「全半全」「全半全」
⑥エオリア旋法~シ♭「レ♭ミ♭ファ」「ファソ♭ラ♭シ♭」は全-「半全全」「半全全」

テトラコルドの2つのユニットは、2つが全く同じ形であることが分かります。
ここで着目していただきたいのは、2つのユニットの始まりの音です。
タイプⅰ~「ド」と「ソ」
タイプⅱ~「ド」と「ファ」
の2つのタイプがあることです。


3 ムータツィオの理由が分かる
ソラミゼーションにおいて、ムータツィオをする理由は「シ」がないからではなく、別な理由があったということです。
なぜ「シ」の音名を作らなかったか?はとり敢えず置いておいて、
とにかく「ド」~「ラ」までの音名があるわけですので、それなら「ラ」又は「ラの次」の音でムータツィオしてよいはずです。

それなのに
ムータツィオは「ファ」or「ソ」で行っていました。
「ファ」or「ソ」は、テトラコルドでの2つ目のユニットの始まりの音名です。
ヘクサコルドにおいても、テトラコルドが意識されていたことがうかがえます。


4 ヘクサコルドでの乗り換え
ドレミ・・・の音名が作られる前は音名は低い音から
「A-B-C-D-E-F-G-a-b柔-b堅-c-d-e-f-g-aa-bb柔-bb堅-cc-dd-ee」
と表記されていました。

オクターブの違いが分かるように、大文字、小文字、2つの小文字で表記されていたのですね。

①ここで注目は、
「音はAから始まっていた」
ということです。
②これらの音名を目で見る分にはすぐに分かるかも知れませんが、発音した場合特に「aa」など2つの小文字で1つの音名は厄介です。
③A音より全音低い音をギリシア文字の「Γ・ガンマ」で表記した、現代のG音です。
④「シ」の音名がないので、どこかでムータツィオする必要性が生じます。

ドレミ・・・の語源の「聖ヨハネ賛歌」の歌詞(ラテン語)

Ut queant laxis  Resonare fibris  Mira gestorum  Famuli tuorum  Solve polluti  Labii reatum  Sancte Johannes

歌詞の各節の始まりが「Ut Re Mi Fa Sol La S-J」になっていますね。


5 どのようにムータツィオしたか
下段の方が低い音です
音名 ①硬い
HC
②自然
HC
③柔か
HC
④硬い
HC
⑤自然
HC
⑥柔か
HC
⑦硬い
HC
ee la
dd la sol
cc sol fa
bb硬 mi
bb柔 fa
aa la mi re
g sol re ut
f fa ut
e mi
d la sol re
c sol fa ut
b堅 mi
b柔 fa
a la mi re
G sol re ut
F fa ut
E la mi
D sol re
C fa ut
B mi
A re
Γ ut
※表中では、「自然な→自然」、「柔らかい→柔か」、「ヘクサコルド→HC」を使用。

①硬いヘクサコルド~ΓABCDEの音間は、硬いB音を含み「全全半全全」
②自然なヘクサコルド~CDEFGaの音間は、Bb.bb音を含まず「全全半全全」
③柔らかいヘクサコルド~FGab柔cdeの音間は、柔らかいb音を含み「全全半全全」
④堅いヘクサコルド~Gab硬cdの音間は、硬いb音を含み「全全半全全」
⑤自然なヘクサコルド~cdefg.aaの音間は、Bb.bb音を含まず「全全半全全」
⑥柔らかいヘクサコルド~fgaa.bb柔cc.ddの音間は、柔らかいbb音を含み「全全半全全」
⑦堅いヘクサコルド~~gaa.bb硬cc.dd.eeの音間は、硬いbb音を含み「全全半全全」

このようにムータツィオで音名を乗り換えても、柔らかい・堅いBb.bb音を使うことにより「全全半全全」の音程を維持し、しかも「シ」の音名がなくても支障が生じないことが分かります。

このようなことを可能にするためにも、「ミ-ファ」間が半音になるように「ファ」or「ソ」でムータツィオしていたことが分かります。
music-notes-3221097_1920.jpg
Ylanite KoppensによるPixabayからの画像


6 ダイアトニックの由来
ところで、「ダイアトニック」という言葉をよく使います。
「ダイア」=2つのの意、「トニック」=主音の意です。
2つの主音は、テトラコルドの2つ目のユニットをムータツィオすると、主音が2つ生じます。

例えば、長音階のイオニア旋法の「レミファ」「ラシド」の「ソ」でムータツィオすると、「レミファ」「レミファ」となり、2つの主音「ド」が生じます。

また、短音階のエオリア旋法のシ♭「レ♭ミ♭ファ」「ファソ♭ラ♭シ♭」の「ファ」でムータツィオすると、「レ♭ミ♭ファ」「レ♭ミ♭ファ」となり、やはり2つの主音が生じます。

これは、他の旋法や移高しても同様です。
こんなところにダイアトニックの由来があったことを見つけて、スッキリしました。
私にはダイアトニックに基づいたダイアトニックコードは必須のシステムです。


7 ソルミゼーションなどの意味
冒頭での説明の通り、ソルミゼーション(英)は楽譜に記載された音を音名で歌う・演奏する意ですが、似た言葉に最も古いソルフェッジオ(伊)とそれをもとにしたソルフェージュ(仏)があります。
本来は同じ意味だったのですが、ソルフェッジオとソルフェージュは単に音符を音名で読むだけでなく、音を聴いて音符にするなどの音のトレーニング全般を指すように使われているようです。
また、「sol-fa」という言葉もありますが、ソルミゼーションと同様にドレミファで歌うことの意のようです。

なお、ソルフェッジオとソルフェージュの語源は「ソとファ」ですが、ソルミゼーションは「ソとミ」のようです。
語源的には、ソルミゼーションだけ少し異質の気がしますが、「硬いヘクサコルド→自然なヘクサコルド→柔らかいヘクサコルド」へのムータツィオの場合は、「sol」の次の音名が「mi」になるところに由来するようです。

後に、「シ・si」の音名が作られましたが、アルファベット1文字で書いた場合に「s」が2つ(solとsi)あり区別できないので、英語では「ti」を使うようです。

また「ut」は「do・ド」に置き換えられましたが、フランスではいまだに「ut」も使われているとのことです。
「do」は主のDominus、「si」は聖ヨハネのSancte JohannesのSj(=si)に由来します。何しろ聖歌から生まれたドレミですので。

「sol」の発音は、「ソ」or「ソ」と「る」はほんの軽くです。ハッキリ「ソル」でもOKらしく、この辺りはイタリア語はいい加減、いや!おおらかだそうです。(イタリアに住んでいた友人を通じて、オペラを勉強中の人から聞いた話です。)


8 最後に確認
その1 ムータツィオの必要性
現代では、どの音(C、D、E、F・・・など)からでも、「ドレミ・・・」をスタートできます。
そのようなことが出来るのに、なぜ難しい「ムータツィオ」などということをしたのでしょうか?

その理由は、現代は平均律を使っているからです。
当時は、ピタゴラス音律でしたので、現代のように自由にどの音を「ド」にするなどということが出来なかったのです。
平均律では音と音の間隔が指数的に一定になるように設定されています。
したがって、「C-C♯-D-D♯-・・・」といった間隔は指数的に一定です。

しかし、ピタゴラス音律ではC音を基にG音とF音が作られているので、指数的に間隔が一定なのは「F-C-G-・・・」という部分が指数的に一定になっています。
したがって、「ド」をどの音にするかは制約があったのです。

しかし「ムータツィオ」というシステムがあることによって、少なくとも3種類の音を「ド」に設定で来たということになります。
これが、発展して現代の〇調になると「ド」の位置が変化するという「移動ド」のシステムに繋がっています。


その2 「柔らかいb」と「硬いb」の存在理由
また、「柔らかいb」と「硬いb」が存在したのも、「ムータツィオ」を行った場合に「ミ-ファ」の間隔を半音にするために工夫されたものです。
もし「柔らかいb」という考えがなかったら、「fa」を「ut」にムータツィオが出来なかったことになります。

これが出来ないとなると、リディア旋法、ミクソリディア旋法、エオリア旋法ではムータツィオが出来ないということになります。
ピタゴラス音律を使っていた当時としては、大問題です。

ですので、「柔らかいb」と「硬いb」というシステムが必須だったことになります。

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この記事へのコメント

  • yoshi

    わけいさん。こんばんは。
    いつもお世話になります。ブログ内の質問です.
    ブログ友が困っているようなので、お知恵をお借りしたくメールしました。気持ち玉記入欄の横幅が伸びて、画面半分以上となっています。
    通常のデザイン シンプルAサイズの幅 程度にするには、どんな手順が必要かお知らせ頂れば、大変有り難いです。
    お忙しいところ、お願いして申し訳ありません。
    よろしくお願いします。
    2019年11月25日 19:55
  • わけい

    yoshiさんへ
    こんにちわ!
    ご相談コメントどうもありがとうございます。
    私なんかは、画面が乱れることはしょっちゅうです ^^; 。
    ①ブログ全ての画面が乱れる
    ②そのページだけの画面が乱れる
    ③複数のページが乱れるが、大丈夫なページもある
    これ以外もあるかもしれませんが、とりあえず考えられる状況は3パターンあると思います。
    ①は、最初から用意されている基本的なCSSをいじるかそれに優先する記述をした場合・・・多分これじゃないでしょうね
    ②は、そのページに書かれたHTMLやCSSやJavascriptの記述に問題がある。
    ③は、②と同じことを複数のページでやっている状態

    ◎CSSやJavaScriptは使わないという方の場合の考えられる対応策:
    ②と③のHTML上に、他の問題のないページと比較して、なにか違う記述があるわけですから、そこを変えてみる。

    推測ですが、乱れているのは「気持ち玉記入欄」だけではないのでは。他にも「コメント欄」、本来ならサイドバーにあるはずの「最近の記事」「テーマ別記事」「カレンダー」など、ほかの場所に移動していませんか。

    特別なことをしていれば自分でも認識があるはずですので、そういったことをしていなければ・・・
    HTMLの記述の中にメイン欄の幅を超えている画像があり、ページの配置が変わって乱れている可能性があります。
    A:試しに写真の横幅を少し小さくするか、サイズ指定をなくするかしてみてください。
    width="600"ならwidth="500"にする、
    または「widthやheight」の指定自体を削除するなどです。
    ※複数枚の写真があれば、そのすべてを変更しないと効果がありません。
    B:なので、写真のすべてを一旦全部削除して、また1枚だけ挿入して確認するとはっきりします。
    C:あるいは、新規に下書き状態の記事を書いて1枚ずつ写真を挿入して、その都度プレビューで確認する方法もいいかもです。
    ※私なら、Cの方法が手っ取り早い気がします。
    2019年11月26日 11:29