ビートルズの「ノルウェーの森」の調

1 ビートルズの「ノルウェーの森」は長調でも短調でもない
先日の記事「調号と調」で、調号は、変化記号が最も多いもので7つと決まっていて、曲の途中で転調のために、8つ以上必要になることがある場合は、臨時記号を使って対応すると説明しました。

その記事は長・短調を前提にしたものでした。
長・短調以外の旋法では、転調しなくても臨時記号を使わないと対応できないことがありることにも触れました。
その様な曲について、説明したいと思います。

具体例で、ビートルズの曲「ノルウェーの森」で説明したいと思います。
kagu_boroborob.png
Norwegian woodのイメージ画像

おそらくオリジナルはキーEでしょうが、手元に3種類のキーの楽譜があり、その中でキーGだと♯ の数が少なく分かりやすいので、キーGの楽譜を使って以下で説明します。


2 「ノルウェーの森」の中身
調号はキーGでは、Fに ♯(シャープ)が付きます
ところが、不思議なことに曲中でF音は全て♮(ナチュラル)が付いています

つまり、結果的にはメロディーには1つも変化記号が付いていません。

じゃあ、最初からキーCのハ長調でいいじゃん、などと思いますがキーCでは都合の悪い理由があるはずです。
その理由を考えてみます。


3 「ノルウェーの森」は調号はキーGの長調だけど何か変
この曲はメロディが2種類(Aメロ・Bメロ)しかないシンプルな曲です。
基本的に使われているコードは最初の4小節は「G」だけで、続く4小節は「Gm、C、Am7、D」が使われています。
曲はまだ続きますが、基本的にこれの繰り返しです。

5~8小節(Bメロ)の部分の楽譜を見ると、「B♭音」でハモっています。

キーGで、F♮になっているので、最初の4小節(Aメロ)は音階は「G-A-B-C-D-E-F-G」です。
これを、音間を「全=2・半=1」で表記すると、「2・212-212」となります。

5~8小節(Bメロ)は音階は「G-A-B♭-C-D-E-F-G」です。
音間は「212-2-212」です。

もし長調なら音間は「221-2-221」です。
これをどんなに移調しても、長調である限りこの音間は変化しません。

もしこれが短調なら音間は「2・122-122」です。
同様に短調である限りどんなに移調しても、音間は変化しません。

長調でもなく短調でもない、この曲は一体何なんでしょうね。



4 「ノルウェーの森」の音階は
答えを先に言うと、「ノルウェーの森」のAメロ部分は、音間が「2・212-212」の「ミクソリディア旋法」の音階です。
ドレミ・・で書くと「ド レ ミ ファ ソ ラ ♭シ ド」ですね。

Bメロ部分は、Bに♭が付いているので音間が「212-2-212」の「ドリア旋法」に転調しています。
ドレミ・・で書くと「ド レ ♭ミ ファ ソ ラ ♭シ ド」になります。

スタートは「ミクソリディア旋法」で途中で「ドリア旋法」に転調を数回繰り返している曲ですね。

とてもシンプルな曲構成ですが、少し変わったメロディに聴こえるのは長調でも短調でもないという点にあり、かつ「ミクソリディア旋法」から「ドリア旋法」転調しているなのでしょう。
なお、この少し変わったメロディにはシタールの音色が効果的なのかもしれません。

それでは、以下で各種の音階の音間をチェックしてみましょう。


5-① 長音階=イオニア旋法
普段よく耳にする長音階がこの「ドから始まる」音階です。
音間はどのように移調しても全て「221-2-221」になっています。
つまり、ハ長調もト長調も嬰〇〇長調や変▼▼長調でも音間は「221-2-221」で共通です。
音階名音名(固定ド)音間
Cイオニア ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド 221-2-221
Dイオニア レ ミ ファ ソ ラ シ
Eイオニア ファ ソ ラ シ ド レ
Fイオニア ファ ソ ラ シ ド レ ミ ファ
Gイオニア ソ ラ シ ド レ ミ ファ
Aイオニア ラ シ レ ミ ファ ソ
Bイオニア ド レファ ソ ラ
」が付く音は、「」が付く音はで表示(以下同様)


5-② ドリア旋法
ノルウェーの森にも使われた旋法です。
他にも「スカボロフェア」、「グリーンスリーブス」、ドラクエ「荒野を行く」、アナと雪の女王「Let It Go」でも使われています。

基本形が「レ」から始まると変化記号が付かない旋法です。
音間は全て「212-2-212」になっています。
音階名音名(固定ド)音間
Dドリア レ ミ ファ ソ ラ シ ド レ 212-2-212
Eドリア ファ ソ ラ シ レ ミ
Fドリア ファ ソ ラ シ ド レ ファ
Gドリア ソ ラ ド レ ミ ファ ソ
Aドリア ラ シ ド レ ミ ファ ソ ラ
Bドリア レ ミ ファ ソ ラ シ
Cドリア ド レ ファ ソ ラ


5-③ フリギア旋法
基本形が「ミ」から始まると変化記号が付かない旋法です。
ポップス界ではあまり使わてないと思います。
音間は全て「212-2-212」になっています。
音階名音名(固定ド)音間
Eフリギア ミ ファ ソ ラ シ ド レミ 122-2-122
Fフリギア ファ ソ ラ シレ ミ ファ
Gフリギア ラ シレ ミ ファ ソ
Aフリギア ド レ ミ ファ ソ ラ
Bフリギア シ ド レ ミ ファ ソ ラ シ
Cフリギア レ ミ ファ ソ ラ シ
Dフリギア ファ ソ ラ ド レ


5-④ リディア旋法
基本形が「ファ」から始まると変化記号が付かない旋法です。
ポップス界ではあまり使われていないと思います。
音間は全て「2-221-221」になっています。
音階名音名(固定ド)音間
Fリディア ファ ソ ラ シ ド レミ ファ 2-221-221
Gリディア ソ ラ シ レ ミ ファ
Aリディア ラ シ ド レファ ソ
Bリディア ド レ ミ ファ ソ ラ
Cリディア ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド
Dリディア レ ミ ファ ソ ラ シ
Eリディア ファ ソ ラド レ


5-⑤ ミクソリディア旋法
ビートルズ「ノルウェイの森」で使われていました。
アナと雪の女王「Let It Go」やディープパープル「ハイウェイスター」もこれです。
キャンディーズ「暑中お見舞い申し上げます」のサビでも使われています。

基本形が「ソ」から始まると変化記号が付かない旋法です。
音間は全て「2-212-212」になっています。
音階名音名(固定ド)音間
Gミクソリディア ソ ラ シ ド レミ ファ ソ 2-212-212
Aミクソリディア ラ シ レ ミ ファ ソ ラ
Bミクソリディア ド レファ ソ ラ シ
Cミクソリディア ド レ ミ ファ ソ ラ
Dミクソリディア レ ミ ファ ソ ラ シ ド レ
Eミクソリディア ファ ソ ラ シ レ ミ
Fミクソリディア ファ ソ ラ ド レ ファ


5-⑥ 短音階=エオリア旋法
基本形が「ラ」から始まると変化記号が付かない旋法です。
これも長音階のイオニア旋法同様によく耳にする短音階です。 音間は全て「2-122-122」になっています。
音階名音名(固定ド)音間
Aエオリア ラ シ ド レミ ファ ソ ラ 122-2-122
Bエオリア レ ミ ファ ソ ラ シ
Cエオリア ド レ ファ ソ ラ シ
Dエオリア レ ミ ファ ソ ラ ド レ
Eエオリア ファ ソ ラ シ ド レ ミ
Fエオリア ファ ソ ラ シレ ミ ファ
Gエオリア ソ ラ ド レ ファ ソ


5-⑦ ロクリア旋法
基本形が「シ」から始まると変化記号が付かない旋法で、教会音楽の正格旋法としては採用されていない音階です。
ほとんど使われないと思います。
音間は全て「122-122-2」になっています。
音階名音名(固定ド)音間
Bロクリア シ ド レミ ファ ソ ラ シ 122-122-2
Cロクリア レ ミ ファ ソ ラ シ
Dロクリア ファ ソ ラ シ ド レ
Eロクリア ミ ファ ソ ラ ド レ ミ
Fロクリア ファ ソ ラ シ ド レ ミ ファ
Gロクリア ラ シレ ミ ファ ソ
Aロクリア ド レ ファ ソ ラ


 
6 以上をふまえて、「スカボロフェア」がドリアな訳
サイモンとガーファンクルでおなじみの「スカボロフェア」は、ドリア旋法の曲とされています。
ドリアな理由を、確かめてみたいと思います。

「②ドリア旋法」のところで説明しましたが、ドリア旋法の曲は結構多いです。

ドリア旋法は「レ」から始まると変化記号が付かない旋法で、音間は「212-2-212」でした。

手元にある「スカボロフェア」の楽譜を見ると、キーはEmで、調号は♯ がF音に付いています。
しかし曲の中では、C音にも♯ が付いています。
したがってキーはEmですが、音階は「E-F♯-G-A-B-C♯-D-E」で、音間は「212-2-212」ですね。

「212-2-212」の音間は「ドリア旋法」しかありません。
というように、長調でもなく短調でもなく「ドリア旋法」となります。

ちなみに、基音がEなので、「Eドリア」になります。
「②ドリア旋法」のところの表の上から2番目の音階です。


7 もう一つ、「グリンスリーブス」がドリアな訳
楽譜を見ると、調号は♭がB音に付いていて、キーはDmになっています。
しかし、曲の中でB音には全て♮が付いています。
そして、C音に♯ が付くとき・付かないときがあります。

したがって、キーはDmで、基本的には「D-E-F-G-A-B-C-D」で、音間は「212-2-212」のDドリアです。

ときにC音に♯ が付くのは、基音のDとの間、つまりC-D間を半音にしてC音に導音の役割を持たせるためです。
使用されているコードは「Dm、F、C」を基本に、C音を導音にするときに「A」のコードが使われています。
導音としてのAコードなので落ち着く先のコードはDmが基本になります。

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この記事へのコメント

  • 偽ストラト

    おはようございます。
    ビートルズの曲はおかしな(おもしろい)コード進行が
    ありますね。そういえば、And I Love HerはDドリア
    で書かれていると思いました!(^^)!
    2019年11月29日 10:51
  • わけい

    偽ストラトさんへ
    コメントどうもありがとうございます。
    偽ストラトさんのように色々な観点から考えてみることは、非常に重要だと思います。
    And I Love Herもドリアではないかと考えること自体が、とても素晴らしいと思います。そういった色々な視点から見ることが、偽ストラトさんのブログの魅力にもつながっているのだと感じました。
    さて、And I Love HerがDドリアではとの出題を頂きましたので、楽譜を取り出し考えてみました。
    原曲は♯ 4つのキーE(又はC♯m)ですが、使われているコードは低い順に「E F♯m G♯m A B C♯m」の6つです。(途中ギターソロ以降は全体を半音上に転調していますが、音間は変化しないので無視します。また7,6も無視)
    メロディで使用されている音は「E F♯ G♯ A B C♯ D♯」です。
    これの音間は「221-2-221」なので長音階です。移調しても変化しません。
    これをDドリアとするためには①基音をDにし、②音間を「212-2-212」にしなければなりません。
    まず①と②の作業をする前に原曲の使用コードを分かりやすいキーCにすると、「C Dm Em F G Am」となります。これでちゃんと演奏できます。
    さて、次に音間をドリアの「212-2-212」にすると・・・
    「C Dm E♭m F G Am」とEmに♭を付けないとドリアになりません。
    しかしこの状態ではAメロはOKですが、Bメロが弾けません。
    ※Aメロ~「Dm Am Dm Am」/「Dm Am F G C」
    ※Bメロ~「Am G Am Em」/「Am Em G G」→EmならOKですが、E♭mだと、変な感じがします。
    これをいくら移調(Dドリア、Eドリア・・・など)しても音間は変わりませんので、ドリアに似ていますが、やはり違う気がします。
    でも偽ストラトさんに今回のような提案を頂いたことは、感謝しています。私も勉強になりました。

    追伸:調号は長調・短調用に都合よく作られているものなので、それ以外の旋法の楽譜には途中で該当音に何度も臨時の変化記号が使われます。(付くべき音が使われなければ臨時記号も登場しません。)
    今回のAnd I Love Herは全ての音が使われていますが、臨時記号は1度も使われていませんでした。


    2019年11月29日 15:45