モクレンの仲間の学名の面白い話題

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モクレンの仲間で、公園や街路樹として植えてあるのをよく見かけます。
現在花盛りですね。
よく目にするのが、ハクモクレン、モクレン、コブシですね。

この3種の学名については、命名規約の原則と異なる例外的な学名になっています。
今日はこのお話です。



コブシの学名は保存名

現在コブシの学名は、Magnolia kobus DC. (1817)です。

1817年にA.P.de Candolle(略:DC.)が、和名のこぶしをラテン語化した「kobus」の種形容語を用いてから、ず~とこの「M. kobus DC.」が学名とされてきました。

ところが、小泉源一氏がA.P.de Candolleの記載したタイプ標本を調べた結果、そのタイプ標本はコブシではなくモクレンであることに気付き(1929)、新しい学名の M. praecocissima Koidz. を発表しました。
※「Magmolia」は植物学者「Magnol」に由来、「praecocissima」は「最も早い」の意味。

学名と標本は1体1の関係で永久に結びついているため、モクレンの標本に対してコブシの学名を付けたことになり、無効な学名ということになります。
しかし現実にモクレンとは別の種のコブシという植物が存在していて、その植物は長期間「M. kobus」の学名が使われてきています。
国際植物命名規約の原則からすれば、M. praecocissima Koidz.(1929)の方が正しいということになりますが、長期間M. kobusも使われてきており、混乱が起きることとなります。

そこで、この混乱を回避するために、A.P.de Candolleの原記載のタイプを小泉が指摘した標本でなく、原記載の中で引用されているケンペルの図(Kaempfer, Icon. Sel. Pl.: t. 42.1791)であると判断することにすることで意見がまとまり、
国際植物命名規約2000年版(St Louis Code)の附属Ⅲbの保存名リストに、
M. kobus DC., Syst. Nat. 1: 456. 1-15 Nov 1817 が登載されました。

保存名リストに記載されると、M. kobus DC.より古い名前が見つかったり、それを覆す理由が見つかっても、M. kobus DC.の学名は廃棄できない「最も古い有効な名」と見なすことになったのです。



ハクモクレンの学名は廃棄名により復活

現在ハクモクレンの学名は、Magnolia denudata Desr. (1792)です。
※「denudata」は「露出した」の意味。

ところが、M. denudata Desr. (1792)より先に記載されているLassonia heptapeta Buc’hoz (1779) が同種であることがJames Edgar Dandyにより判明(1934年)し、古い学名の方が優先権があるとのルールにより、属名をMagnoliaに移した上で、M. heptapeta (Buc’hoz) Dandy が正当名とされたのです。
※「heptapeta」は「7花弁性の」の意味。

しかし、あまり知られていなかった L. heptapeta Buc’hoz をルールーどおりに有効とすると、過去の主要な文献が間違いということになります。
そのため、L. heptapeta Buc’hozは有効でないと判断する方が現実的とされ、
国際植物命名規約2005年版(Vienna Code)の附属Vの廃棄名リストに、
M. heptapeta (Buc’hoz) Dandy が登載されました。

これにより2005年以降は、M. heptapeta (Buc’hoz) Dandyは、無効の扱いとなったのです。
そして、M. denudata Desr. がハクモクレンを表す最も古い有効名として復活したのです。



モクレンの学名は廃棄名による復活

ハクモクレンと同じような話ですが、現在モクレンの学名は、Magnolia liliiflora Desr.(1791)です。
※「liliiflora」は「ユリの花のような」の意味。

ところが、M. liliiflora Desr.(1791)に先行する学名がある、
それは、Buc'hozが 1779年に Plantes Nouvellement Decouvertsに記載した Lassonia quinquepeta は、M. liliiflora(モクレン)と同一種であると、Dandyが1934年に指摘しました。
※「quinquepeta」は「 5花弁性の」の意味。

これもハクモクレンの場合と同様に、L. quinquepeta Buc’hozは有効でないと判断する方が現実的とされ、
国際植物命名規約2005年版(Vienna Code)の附属Vの廃棄名リストに、
M. quinquepeta (Buc’hoz) Dandy が登載されました。

これにより2005年以降は、M. quinquepeta (Buc’hoz) Dandyは、無効の扱いとなり、M. liliiflora Desr. がモクレンを表す最も古い有効名として復活したのです。





本来なら、優先権により正名となるはずの学名が、厳密に適用することによって生じる無益な変更を避けるための手段として「保存名」「廃棄名」という例外的な手段が用意されているのですね。

しかしながら、コブシ、ハクモクレン、モクレン関連の種が、保存名や廃棄名のリストに掲載されたのが2000年と2005年と比較的最近のため、未だに無効となった名前が使われていることがあります。

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この記事へのコメント

  • tor

    こちらのハクモクレンは終わろうとしています。
    コブシが咲いていますよ。
    似た花なので間違えることも。
    学名にも複雑な過程があるのですね。
    2020年03月21日 17:08
  • わけい

    torさんへ
    こちらのハクモクレンもコブシンもtorさんのとこと同じ状況のようです。
    両方似た花で、私もよく違いが分からなかったのですが、本日ハッキリした違いを見つけました。(花が咲いた時点で葉が付いているのがコブシ)
    忘れなければ、来年も見分けが付くはずですが、忘れる可能性が高そうです。

    ※以下は参考までに・・・
    ①学名は、あくまでもその標本に対して記載したもので、種の全体に対して記載されたものでないという点が1番のポイントだと思います。

    ②2つ目のポイントは、たとえ中国が中心の生息地であっても、標本が熊本で採取されたものであれば、kumamotoenseといった種形容語を付けることが出来る(記載した時点では植物学者にはその種の分布は分からず、後の研究によって分布が分かるため)という2つの点が、世間一般のイメージと大きくずれている気がします。

    ③もう一つ上げるなら、種の正名は1つだけ(後は異名)なのですが、どこからどこまでが同一の種なのかの線引きは学者によって異なるという点ですね。
    2020年03月21日 22:37
  • フラバーバ

    植物の名前を付けるのも 難しい事なんですね。
    散歩道で 産毛のような物に覆われた 蕾を見かけ
    モクレン? コブシ?と 決められず 花の
    咲くのを 待っていました。
    二週間ほど前に やっと 咲いた花は ハクモクレン
    で 気持ちがスットしました。
    木の表面にも 特徴があるのかもしれないですが
    くべたことがないので 違いがわからないです。
    今 コブシも 咲きだしてきました。
    花の形で モクレン コブシと判断しています。
    2020年03月22日 16:04
  • わけい

    フラバーバさんへ
    コメントどうもありがとうございます。
    本当に花が咲くまでは見分けがつきませんね。
    木で見分けられたらすごそうですね。
    どれも春を告げる花なので、いいですね。
    2020年03月22日 20:41