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1 食事摂取基準のコレステロールの摂取目標量
厚生労働省により5年ごとに発表する「食事摂取基準」というものがあります。
最新は、「日本人の食事摂取基準」(2020年版 使用期間:2020~2024年度)です。
今回取り上げたいのは、「日本人の食事摂取基準」(2015年版・2014年3月発表 使用期間:2015~2019年度)です。
この食事摂取基準には、それ以前の「コレステロールの摂取目標量」の記載が無くなりました。
2010年版までの「日本人の食事摂取基準」には「コレステロールの目標量は、成人男性は1日750mg未満、成人女性は1日600mg未満」と書かれていました。
そして、過去には色々な本や資料、パンフレット・リーフレットには、
「1日に○○なら△個・匹・グラム以内」といった具合に書かれていました。
その記述は、徐々に姿を消し、現在では目にすることもなくなりました。
コレステロールは生体に不可欠な物質であり、生体内で重要な働きをすることが分かり、コレステロールに対する認識は以前とはずいぶん変わってきました。
しかし、過去の影響も残っているせいか、現在でもコレステロールを悪者とする、資料や発言やネットでの記述を目にします。
2 コレステロールの大半は肝臓で作られる
実は、私たちは、肝臓を中心に多くのコレステロールを生成しています。
食事で摂取する以上の量をです。
※コレステロールは、主に肝臓で、小腸、副腎皮質、性腺などでも作られる。
食事で摂取制限をすると、肝臓などは必要量を確保するために、せっせとコレステロースを作ることになります。
コレステロールは常に一定量が保たれるようになっているため、食事でとる量が少なければ体内で多く合成され、食事でとる量が多ければ少なく合成されます。
健康な人なら、コレステロール摂取量の多い少ないは、直接に血液中のコレステロール値に反映されないということです。
3 コレステロールの必要量・生成量
コレステロールの必要量は、成人で1日に1,200~1,300mg程度といわれています。
平成27年度国民健康・栄養調査では、成人のコレステロールの摂取量は、平均で、男性が300~350㎎、女性が250~300㎎程度でした。
必要量との差は、体で生成しないとコレステロールが不足するということになります。
コレステロールの必要量の約80%が肝臓を中心に生成されています。
平均で「12~13 mg / kg体重/ 日」です。
体重50kgの人だと600~650mg、体重60kgなら720~780mg、体重70kgなら804~910mgの生成量の計算になります。
※体内でコレステロール生成量や必要量は、個人差があり、遺伝や代謝状態にも影響されます。

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いくら食事からの摂取を控えても、その不足分を体で生成しているのでは食事制限の意味が無いです。
つまり、意味がないので厚生労働省は
食事摂取基準の「コレステロールの摂取目標量」の記載をやめた
ということです。4 コレステロールの役割
コレステロールが一定の割合に保つように体の仕組みが出来ているってことは、コレステロールは体に必要なものだからです。
では、どのようなことに使われているのでしょうか?
① 細胞膜~リン脂質とともにあらゆる細胞の細胞膜の材料
② ホルモン~男性・女性ホルモン、コルチゾールの材料
③ 胆汁酸の生成~消化液の1種で脂肪酸の分解に不可欠、ビタミンの吸収
④ 脳・神経に必須~体のコレステロールの4分の1は脳に存在
⑤ ビタミン~ビタミンDを作る材料
⑥がん対抗力~がんに対抗する免疫細胞の細胞膜に機能
② ホルモン~男性・女性ホルモン、コルチゾールの材料
③ 胆汁酸の生成~消化液の1種で脂肪酸の分解に不可欠、ビタミンの吸収
④ 脳・神経に必須~体のコレステロールの4分の1は脳に存在
⑤ ビタミン~ビタミンDを作る材料
⑥がん対抗力~がんに対抗する免疫細胞の細胞膜に機能
※①コレステロールは、細胞膜の流動性、細胞膜の硬さ、他の脂溶性物質の透過性の調節などの機能を担う
※②コルチゾールは、糖やたんぱく質、脂質の代謝に関与し、免疫系・中枢神経系・代謝系、ストレスと心身の健康状態を結びつけ、身体のさまざまな機能に影響を及ぼす生命維持に欠かせないホルモン
※③胆汁酸は脂肪を水に溶けやすくしたり、消化酵素リパーゼを活性化したり、脂肪の消化吸収を促進する
※④コレステロールが集中する神経細胞のミエリン鞘では、脳から体の各部分に情報を電気的に高速に伝達する際、漏電を防ぎ正しく伝えるためコレステロールが絶縁体の役割を果たす。コレステロールの欠如は、脳細胞間の伝達問題を引き起こし、認知と記憶が低下する
※⑤紫外線を浴びると、皮膚下でコレステロールからビタミンDが生成され、生成されたビタミンDは、インスリン抵抗性に対して抑制的に関与する。ビタミンDが多い人ほどコレステロール値が低い
※⑥コレステロール値が低いとがんの発症リスクが高まる。がんに対抗する免疫細胞の細胞膜にコレステロール不足だと十分に機能できない。がんの患者の多くは血中のコレステロール値が低い
長寿の方のコレステロール値は、高めの人が多いです。
高齢者の方は特にですが、健康診断や各種の情報により、コレステロール値を気にして食事制限をすると、必要なコレステロールだけでなく必要なたんぱく質も不足して、かえって不健康になりやすいので、注意が必要です。
コレステロール低下剤を服用している方は、医師に服用に関して相談されてみてはいかがでしょうか。
高齢者の方は特にですが、健康診断や各種の情報により、コレステロール値を気にして食事制限をすると、必要なコレステロールだけでなく必要なたんぱく質も不足して、かえって不健康になりやすいので、注意が必要です。
コレステロール低下剤を服用している方は、医師に服用に関して相談されてみてはいかがでしょうか。
この記事へのコメント
サヤ侍
わけい
コメントどうもありがとうございます。
サヤ侍さんも健康に関する記事をいくつかお書きになっておられ、「血圧」の記事はよく覚えています。とても参考になりました。
「電波」のことも書かれていました。これも参考になります。
(著書のタイトルは電磁波と書かれていますが、電波の間違いでしょう)
コレステロールの話は、悪玉・善玉にふれるる必要がありますが、話が長くなるので今回は一切ふれませんでした。
草しか食べない「ぞう」が大きいのは、不思議ですね。
今まで考えたことがありませんでした。
サヤ侍さんの何でも自分でやってみる行動力には、驚いています。
ほんの少しでもマネできればいいのですが、と思っています。
また、世間の話をうのみにすることなく、疑ってかかる・話半分に・・・の姿勢には共感します。
これからもよろしくお願いします。
ゆの
こんばんは(^。^)
コレステロール、薬を飲んでいる私にも
興味深いお話です!!
ネットで見たのは、運動より食事
先日、産業医の先生に相談したら、食事じゃない
σ^_^;悩みます〜
いずれにしろ、若くないんだなぁ、と実感しました( ;∀;)
わけい
コメントどうもありがとうございます。
以前、こんなことがありました。(私の実際の経験です)
健康診断で毎回コレステロールが高いと指摘されていました。
何年も放っておいたのですが、ついに病院に行ったところ、直ぐにコレステロール低下剤を処方されました。
しばらくは飲んでいましたが、薬を減らしたいので医師に相談すると、毎日1錠→2日に1錠の服用に変えてくれましたが、処方の方は1日1錠分だったので、かなり溜まりました。
しばらくしてその旨を医師に話し、処方をやめてもらいました。
一応は、溜まっていた薬を飲み、無くなったらまた処方することになっていましたが、実際には飲むのをやめて、捨ててしまいました。・・・現在に至っています。
健康診断の問診で、コレステロールの薬を飲んでいるにチェックするだけで、総合評価は「D」になりましたが、飲むのをやめるとそれだけで(他に悪いところが無ければ)「A」になりました。
なお、薬をやめてもコレステロール値が上がったり、体に支障があったりは、しませんでしたので、結果的には何の問題も無かったのかなと思います。
日本の基準値は低めの設定です。この基準値より高いと薬を処方されますが、ホントに必要なのかはその医師でも分からないことが多いようです。
単に基準値より高いから処方している、その基準値がその人に合っているかには関係なしにです。
ゆのさんがどの程度の値か分からないし、医師ではないのでどうすべきかは、私からは言えませんが、医師に相談するのは意味のある事だと思います。
ゆらり人
もう何十年も飲まされていますが、良く分かりました。医者も自動的に出すので、何の疑問も持たず飲まなければと使命感の様に感じています。
どうしても血糖値も気にしなければならないので、深くは考えていませんでした。
大変に参考になりました、一度医者に聞いてみようかな?
わけい
コメントどうもありがとうございます。
人体にとって最も基本的代謝の要となる物質は「アセチルCoA」で、これは通常はブドウ糖(血糖値に直接関係)から作られます。
この物質は、人間のエネルギー源そのもの、コレステロール、中性脂肪、アミノ酸、コエンザイムQ、ドリコール、ホルモンなど様々な物質に変化します。
コレステロール低下剤(スタチオ剤)は、「アセチルCoA」が変化する過程で変化させない(阻害剤)ですので、体の多くの機能に影響を与えます。
単に「コレステロールが下がってよかったね」では終わらないということです。
そこだけを見ると、心筋梗塞の死亡を防ぐ効果はありそうですが、免疫機能を低下させるのでがん死亡が増えます。
日本人では圧倒的にがんによる死亡が多いです。
コレステロール低下剤を服用することは、狭い範囲で見るとコレステロールを下げますが、広い範囲で見ると体のいたるところに悪い影響を与えていますので、単に出されたものを長年服用するだけでなく、ときには服用を続けること、量、必要性、副作用等に関して医師にご相談されるのが有用だと思います。